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風営法改正について考える【第1回】

【第1回】2016年6月23日風営法改正
「踊っては行けない国・日本」から「踊ってもいい国・日本」への経緯

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2016年6月23日 風営法改正とその経緯のまとめ

2016年6月23日 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称:風営法)が改正されました。
改正前夜や当日は大手ニュースメディアやTVでも話題となっており、

「今までは朝までの営業が実はグレーだったクラブが、法改正によって胸を張って朝まで営業してもOKになった!」

という部分がピックアップされ、歓迎する人々と、治安を不安視する人々の意見などが報道されていました。
しかし、このような報道は今回の件のほんの一つの側面に過ぎません。

風営法改正から2週間。
法改正が行われた背景や、実際にどのような法律で、今後どのように影響するのか。
本連載ではクラブカルチャー目線かつ、冷静な視点でまとめようと意図しています。
第1回は9つの重要なファクターとその解説です。

1.クラブカルチャーにおける風営法改正前(2016/6/22以前)
2.大阪北区のNOON(ヌーン)摘発と裁判
3.Let’s DANCE(レッツダンス)
4.クラブとクラブカルチャーを守る会
5.PLAYCOOL
6.クラブに対する苦情
7.クラブカルチャーにおける風営法改正後(2016/6/23以降)
8.小バコ
9.経済効果

1.クラブカルチャーにおける風営法改正前(2016/6/22以前)

「客にダンスをさせ」る行為について

風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、風俗営業取締法として、昭和23年(1948年)7月に制定。
風俗のびん乱の問題は社会的にも大きな問題であり、警察の権限を主に「風俗犯罪の予防」という見地から売春、賭博等に着目し規制が行われました。
その際、「ダンスホールが買売春の取り引きに使われている」との認識から、「ダンスホール=風俗営業」とされ、「ダンスをさせること」が規制の対象となります。
 
ダンスについての具体的な許可条件としての規制の詳細は、法律条文ではなく、施行規則、施行令、内閣府令等で示され、「客室が66㎡以上でその5分の1以上が踊り場面積としなければならない」(施行規則第8条・構造及び設備の技術上の基準)、「電球の明るさが5ルクス(10ルクス)以上でなければならない」(施行規則第8条)、「営業時間は住居地域で午前0時まで、近隣商業地域で午前1時までの制限」(施行例第8条・風俗営業の営業時間の制限に関する条例の基準)などがあり、許可申請を行っていても違反すれば罰金、営業停止処分等があります。
つまり、許可申請を行っていない施設、許可を得ていても深夜に営業している施設は全て、解釈次第で施行規則に抵触する事になっていました。

2.大阪北区のNOON(ヌーン)摘発と裁判


出典:http://noon-cafe.com/map/

2010年10月東京・六本木のクラブ「911Black」が「無許可で客にダンスさせていた」として摘発。
以降、大阪、京都、名古屋、福岡など全国で20以上ものクラブが風営法違反で摘発されていますが、いずれも深夜営業中の出来事でした。この頃から心斎橋を中心に近畿圏のクラブは一時的に深夜営業を自粛するところが多かったと記憶しています。
しかし、大阪梅田の老舗クラブ「NOON」が2012年4月5日、21時50分頃に「無許可で店内にダンススペースを設け、客にダンスをさせていた」
という理由で摘発され、経営者を始めスタッフ8人が逮捕・勾留されるという事件が発生。
この時開催されていたイベントはブリティッシュロックのイベントで摘発時にはSuedeの『Trash』がかかっていたとのことです。
騒音等の苦情もなく優良な営業を続けていたクラブが摘発された、そして逮捕者が出たことで、事業者、DJ、一般客も含めたクラブシーン関係者は騒然としました。

「無許可で客にダンスさせていた」というセンセーショナルなフレーズがメディアを飛び交い、「客にダンスをさせ」る行為についての議論が白熱。
現在のクラブカルチャーの状況と風営法の定める施行規則の落差に焦点が当たり、風営法改正の気運が一気に高まります。

■NOON裁判1審・大阪地裁

2013年10月に開始。
日本初のダンス営業規制に関わる裁判でマスメディアからも高い注目を集めました。
集まった弁護団は、
1)NOONで行われていたダンスは風営法の規制対象となるダンスではない事、
2)風営法によるダンス営業規制が憲法で謳われている人権を侵害している事、以上の2点を軸に無罪を主張しました。

摘発当日に店内にいたお客さんや警察官に対する証人尋問では、店内で行われていたダンスがどのような物であったかを証明するため、腕や足の動きを実際に確認する場面も登場し話題になりました。
また、弁護団が申請した憲法学者や刑法学者の先生が出廷し、風営法の違憲性や現代における無効性について証言されました。
8回に渡る公判の結果、1審は無罪判決となりました。NOONの営業は風俗営業に当たらない、また風営法の違憲性については退けられたものの、規制の対象を「性風俗秩序を乱す具体的なおそれがある営業」と限定的に解するべきとの見解が示されました。


出典:http://www.osaka-public.jp/blog/?p=33

■NOON裁判2審・大阪高裁

一審の無罪判決を不服とした検察官は大阪高裁に控訴。
これを受け、2014年10月に控訴審が始まりました。
しかし、検察側が請求した証人尋問は却下され、無罪判決(2015年1月21日)となりました。

控訴審の判決文では、新たに「すべてのダンスが3号営業の要件となりうるダンスに当たらない」とし、法改正の見地で言えば現風営法における3号営業(主にクラブ)は風営法の規制対象に当たらないという画期的な見解が示されました。

なお、この控訴審判決に対して検察側は最高裁判所に上告しました。


出典:http://www.cinra.net/news/20150121-noon

■NOON裁判3審・最高裁

最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は7日付で検察側の上告を棄却(2016年6月7日)する決定を出しました。
クラブは風俗営業に当たらず風営法の対象外として被告を無罪とした1、2審判決が確定しました

3.Let’s DANCE(レッツダンス)


出典:http://www.letsdance.jp/

風営法の規制対象から「ダンス」を削除することを目的とした団体。
呼びかけ人として
坂本龍一 (音楽家)
大友良英 (音楽家)
いとうせいこう (作家 クリエイター)
大貫憲章 (音楽評論家 / DJ )
日高正博 (フジロックフェスティバル主宰 SMASH代表)
清水直樹 (サマーソニック主宰 クリエイティブマンプロ代表) 他
という名だたる業界関係者が名を連ねています。

1年以上に渡る署名活動をウェブ、路上パフォーマンス、イベントの中で行い、約16万筆の署名を集め超党派の議員に提出し、ダンス文化推進議員連盟が発足しました。

憲法が保障する、表現の自由、芸術・文化を守ってください
現在の風営法( 旧・風俗営業取締法) は、「売買春」を防止する目的で、終戦直後の1948 年に制定されたものです。
学校でダンスが教えられる一方、未だに法律で踊ることを規制するのは、時代にマッチしないのではないでしょうか。多くのクラブ、ライブハウスは健全に音楽、踊りを通じて人と人が人間的にふれあう交流の場であり、青少年の健全な育成に向けて、薬物や暴力の排除・根絶、地域住民との融和にとりくんでいます。音楽家、アーティストを輩出し、新しい文化を生み出す場としてのクラブ、ライブハウスなどを守り発展させるために、次の事項を請願いたします。

請願事項
1、風営法の規制対象から「ダンス」を削除してください。

2、行政上の指導は、「国民の基本的人権を不当に侵害しないよう」に努め、「いやしくも職権の乱用や正当に営業している者に無用の負担をかけることのないよう」とする「第101国会付帯決議」(衆院1984年7月5日)や「解釈運用基準」(2008年7月10日)にもとづき適正に運用してください。

3、表現の自由、芸術・文化を守り、健全な文化発信の施策を拡充してください。

出典:http://www.letsdance.jp/

4.クラブとクラブカルチャーを守る会


出典:http://clubccc.org/

クラブに関わるミュージシャンやDJが中心となって発足したクラブ事業者会。
ダンス議連へのロビー活動の他に、日々の勉強会と渋谷区街路の早朝清掃活動、また海外の事例を学ぶべく、ベルリン・クラブ・コミッション代表との対談や、オランダ・アムステルダムで開催された「ナイト・メイヤー・サミット2016」に出席するなど活動。
会長: Zeebra
副会長: Watusi (COLDFEET)

私たちクラブとクラブカルチャーを守る会(Club and Club Culture Conference 略称:CCCC:シーフォー)はクラブ固有の文化的価値と経済的可能性を振興し社会と地域に貢献するために、クラブ事業者とアーティストやDJが連携して自主規制ガイドラインの策定やクラブに関連する諸問題の解決に取り組み、より良いクラブとクラブカルチャーの創造を目標とする団体です。

出典:http://clubccc.org/

5.PLAYCOOL

■■■■

CCCCが夜にクラブで遊ぶ人たちのリテラシーを高め、クラブカルチャーのイメージを向上する事が、クラブカルチャーを守る事に繋がるとして掲げたコンセプト。

本来「涼しい」という意味の語 "cool" に「カッコいい」という意味を足し加えたのは20世紀初頭のアメリカ合衆国で、当時奴隷という立場にあったアフリカン・アメリカンでした。 彼らに厳しい生活を強いる "heat" に対して、―coolに― 涼しい顔で自分らしくあり続けることは 仲間からの尊敬の対象となったといいます。
その後、小説家ノーマン・メイラーやジャズ・ミュージシャンのマイルス・デイヴィスらがcool = カッコいいを体現し、定着させていきました。
日本にもcoolによく似た気風がありました。「いき(粋・意気)」です。 江戸の人々は身なり振る舞いを洗練させ、 人情に通じ、遊び方を知っていることを美徳としました。
その反面、やぼな振る舞いや「いきがる」ことは忌み嫌われたのです。
現代に生きる私たちもクラブで遊ぶときには、こうした美学を思い出すようにしたいものです。

出典:http://playcool.info/

6.クラブに対する苦情

音漏れに対する苦情は少なく、クラブの外で騒いでいる酔客の言動が苦情の原因となっています。
(以下、時事ドットコム 2013/05/14より)
警察庁によると、2012年4~10月の間に騒音、酔客のけんかなどクラブに対する苦情が全国で361件あり、うち231件が無許可営業の店舗だった。
10年と12年にはクラブの客が死亡する傷害致死や殺人事件も起きるなどトラブルは深刻化しており、同庁は「現実に被害が出ているのに規制を外すのは難しい」と法改正には否定的な見解を示している。

7.クラブカルチャーにおける風営法改正後(2016/6/23以降)


出典:http://www.asahi.com/topics/word/%E9%A2%A8%E4%BF%97%E5%96%B6%E6%A5%AD%E6%B3%95.html

・1平方キロメートル内に風俗営業店、または、深夜酒類飲食店営業店が300店以上ある繁華街地域。又は、1平方キロメートル内に100人以上の住民がいない地域。
具体的地域は都道府県の条例で定める
・客席1室の広さが33㎡以上あり、客席内に見通しを妨げる設備がないこと。
・光度が10ルクス以上であること。計測は客席で測量する。(客席が客室の1/5以下の場合は客席、ホール両方で測量)店外から店内が見えるガラス張り構造でも可。

以上の条件を満たした施設は「特定遊興飲食店営業」として許可申請を行うことで朝まで営業することができる。なお5時~6時は音を止めなければならない
条件を満たしていない施設は深夜については改正前と同じ状況であるといえますが、午前0時(条例で定めた地域は午前1時)までの営業については「飲食店営業」となった為、NOONの時のような0時前の摘発は今後は無くなります。
ただし、改正前までは違反についての刑事罰はありませんでしたが、この改正後からは許可無しで遊興をしてしまえば2年以下の懲役、200万円以下の罰金となります。

引用元:行政書士 横浜リーガル法務事務所
http://www.hs-gyosei.com/club3/

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